

今回の要点をチェック!
- 流動性とは取引において売買の成立のしやすさを意味する
- 流動性が低くなるのは、取引量が少ないか、売り買いのバランスが大きく崩れる時
- 流動性が低下すると、スプレッドが広がって不利なレートで約定されたり、売買が成立しないリスクが生じる
- 流動性リスクの対応策は取引量が多い通貨ペアを選び、流動性が低下する時間のトレードを避けること
目次
流動性リスクを理解しよう
株の例で「流動性」をわかりやすく解説
それではまず「流動性」という言葉を理解しましょう。
まずは株取引を例に使って説明していきます。
株を取引したことがない人にも分かりやすく説明しますね。
株を取引する時に重要な情報として板情報(気配値)というものがあります。
ある株について買いたい人がどれくらいいるのか、また売りたい人がどれくらいいるのかを価格ごとに表したものです。
下の例を見てみましょう。
売数量(株) | 値段(円) | 買数量(株) |
成行 | ||
903,100 | OVER | |
40,800 | 126 | |
14,200 | 125 | |
24,600 | 124 | |
45,000 | 123 | |
7,900 | 122 | |
121 | 74,500 | |
120 | 69,600 | |
119 | 1,000 | |
118 | 42,400 | |
117 | 21,300 | |
UNDER | 266,200 |
真ん中の数字が株価です。
左の数字がそれぞれの株価で売りたい人の合計数量(株)です。
右の数字がそれぞれの株価で買いたい人の合計数量(株)です。
板情報を見ると株価が123円になったら売りたい人の株の合計が45,000株ありますね。
また株価が120円になったら買いたい人の株の合計が69,600株ほどあります。





このように株の売り買いをする時には反対売買をしてくれる人がいてはじめて成立するのです。
このような売買における成立のしやすさを流動性と言います。
ポイント
- 流動性とは取引における売買の成立のしやすさを意味する
- 対応する売買が十分にある場合は流動性が高い、その逆で取引が成立しにくくなる場合を流動性が低いと言う
FXの流動性リスクを理解しよう
FXにおいても先ほどの株の場合と同じことが起きています。
あまり板情報というのはFXにおいては見ることがないと思いますが、FX会社からの情報などで、「110円には売りオーダーがたくさんあります。」などというニュースが流れたりします。
つまりFX会社にも先ほどの株の時と同じように板情報があるのです。
ある通貨を〇〇のレートで売買したいと思っても、もし対応する反対売買がなければ成立しないということになります。
FXは世界中の人が取引に参加しているため、売買が成立しないことはめったにありませんが、対応する売買が少なくなり取引が成立しにくくなる、つまり流動性が低くなるということは当然あります。


例えば先ほどの板情報をFXに当てはめてみましょう。
売取引量(通貨) | 値段(円) | 買取引量(通貨) |
成行 | ||
903,100 | OVER | |
40,800 | 109.5 | |
14,200 | 109.4 | |
24,600 | 109.3 | |
45,000 | 109.2 | |
7,900 | 109.1 | |
109 | 74,500 | |
108.9 | 69,600 | |
108.8 | 0 | |
108.7 | 42,400 | |
108.6 | 21,300 | |
UNDER | 266,200 |



このように流動性低下によって売買が成立しない、または不利に成立することで損失が発生したりすることを流動性リスクと言います。
FXにおいて流動性が低くなるのはどんな時?


そもそも参加者が少ない場合は、取引量が少なくなり、反対売買が成立しにくくなることはイメージできますよね。
例えば、先ほどの板情報を使って説明すると、108.8円で売りの注文を出したとしてももし、そのレートで買いたい人がいなければ注文は成立しなかったですね。
これは極端な例を使っていますが、ある通貨ペアにおいて市場参加者が少なくなり、取引量が減ると起こり得ることです。
このような場合は、取引が成立しなくなるか、または場合によってはFX会社がスプレッドを広げて取引を成立させてしまうこともあります。

例えば、何か大きな有事が起きて英ポンド/円が急落したとしましょう。
チャートが真っ逆さまに落ちていくような時には、なかなか買いたいという人は少ないと思います。
チャンスとばかりに売りを狙う人はたくさんいるでしょう、また持っていた買いのポジションを損切り決済する(売る)場合もあります。
この例の場合は買う人よりも売る人が極端に多くなり売買のバランスが崩れます。
売ろうと思っても反対売買で買ってくれる人がいなければ取引が成立しませんよね。
このような場合も、取引が成立しなくなるか、FX会社がスプレッドを広げて対応することになります。
ポイント
流動性が低下する時
- 取引量が少ない場合
- 急騰急落などにより、売買のバランスが崩れた場合
流動性リスクに備えよう
流動性が高い通貨ペアを選ぼう
まずは流動性が低下する原因の一つに取引量がありましたね。
この取引量というのは各通貨ペアで異なっています。



反対に発展途上国の通貨を含むペアなどは取引量が少ない傾向があります。
トルコリラ/円や南アフリカ/円などは取引量が少ないです。
流動性リスクに備えるためには取引量が多い通貨ペアを選ぶことが大切です。
流動性が低下する時間のトレードを避けよう

FXは24時間取引ができることも魅力ですが、一日中、取引量が一定という訳ではありません。
一番取引量が増えるのが、ロンドン市場とNY市場が重なる日本時間の午後9時から深夜1時あたり、反対に取引量が減るのが、NY市場が終わり、東京市場が開く前までの午前6時〜8時ごろです。
この取引量が減る早朝の時間帯は、やはり流動性が低下して原則固定のスプレッドが広がる傾向にあります。
大口の注文でレートが一気に動くこともあり注意が必要です。
また年間を通して考えるとクリスマスや年末年始などの休暇中においては参加者が少なくなり同様に注意が必要です。

急騰急落時にも流動性が低くなりますが、予想できるものとできないものがあります。
日時があらかじめ決まっているものとしては、米雇用統計などの重要指標があります。
選ぶ通貨ペアにより異なりますが、ここでは主に米ドル/円の注意すべき指標についてまとめておきますね。
米ドル/円の重要指標
- 米雇用統計
- FOMC
- 日銀金融政策決定会合
- ADP雇用統計
- GDP
初心者はこれらの指標発表時にはトレードを避けたほうが良いでしょう。
予想できないものとしては、震災や戦争、世界的経済危機など不意に訪れるものです。
これらは事前に知ることはできないので、まずはこのようなリスクがあることを想定し損切りを必ず入れるようにしましょう。
取引量が多い通貨ペアを選ぶことで急騰急落時に損切りの決済注文が入らないというリスクも減らすことができます。
流動性リスクについて詳しく説明してきましたが、これらの対策をすればほとんど問題はなくなるでしょう。
ポイント
- 取引量が多い通貨ペアを選ぶ
- 流動性が低下するような時間帯のトレードを避ける