

G20大阪サミットで米ドル円が動き出すか
6月に控えている大きなイベントの1つが6/28(金)〜6/29(土)にかけて開催されるG20大阪サミットです。
今回は日本で開催され、また初めて日本がG20サミットの議長国になるということもあり注目が高いです。

G20サミットは2008年のリーマン・ショックをきっかけに従来のG20財務大臣・中央銀行総裁会議が首脳級レベルに格上げされました。
近年では年1回開催されており、参加国全体のGDPが世界の8割以上をしめることからも分かるように、経済規模の大きい国々が参加します。
世界の諸問題が議題として取り上げられるのですが、基本となるのはやはり経済分野です。
このサミットで議論された内容や、要人の通貨に関する発言などで為替相場が大きく動くことも多いので、今回も注目されています。

米中貿易戦争は一体どうなるの
米中貿易戦争については昨年から頻繁にニュースでも取り上げられているので知っている人も多いと思います。
アメリカのトランプ大統領は選挙期間中に中国との間の貿易不均衡の問題について取り上げていたこともあり、2018年から本格的にこの不均衡に対しての措置を発動してきました。


ここでは米中貿易戦争についての詳細までは説明しませんが、これまでのアメリカの対中制裁の流れを簡単に確認します。
追加関税 | 発動日 | アメリカの対象金額 | アメリカの関税率 |
米中制裁関税第一弾 | 2018/7/6 | 340億ドル | 25% |
米中制裁関税第二弾 | 2018/8/23 | 160億ドル | 25% |
米中制裁関税第三弾 | 2018/9/24 | 2,000億ドル | 10%→25% |
米中制裁関税第四弾 | 2019年6月末以降 を予定 |
3,000億ドル | 25% |
アメリカは追加関税の適用を四段階に分けて中国に譲歩を迫ったのですが現時点で交渉は決裂しており、6月末のG20サミットにおいて対話での解決ができなければ、終了後に第四弾の追加関税を発動する可能性が高まっています。
お互いに譲歩する姿勢を見せないことからまだまだこの貿易戦争は長引く可能性が高いです。
国際通貨基金(IMF)によると貿易戦争がさらに激化して長引けば、アメリカの経済成長率は最大0.6ポイント、中国も最大1.5ポイント下振れすると警鐘しています。
好調だった世界経済も最近では減速傾向にあり、米中貿易戦争によってさらに失速することが心配されています。

アメリカの対中追加関税と米ドル円
それではこれまでの第一弾から第三弾の追加関税措置が米ドル円相場にどのように影響を与えたのかチャートで確認してみましょう。
下のチャートは米ドル円の日足チャートです。


2018年は比較的リスクオン相場で米ドル円が下がりにくい傾向があったことも関係していると思います。
また第二弾の時などは「噂で売って事実で買う」という格言もあるように、それまでは下落基調であったのに措置が発動されると上昇に転じています。
過去の影響を検証すると今回もあまり米ドル円相場に影響を与えないことも考えられますし、第4弾の追加関税発動をきっかけにこれまで下落基調であった米ドル円相場が反転する可能性もありますね。
ただ、現在のチャートをもとに考えると、2019年に入ってからの米ドル円は年始から急落したこともあり、日足、週足ベースでは下落基調が続いています。
また次に予定されている第四弾はこれまでで一番規模が大きいので、基本的にはマイナス要因で米ドル円も下がる可能性が高いです。
現在の相場環境やチャートから判断すると下落材料ですが、これまでの第一段から第三段が与えた影響を考えると不透明なところがあります。

米FOMCにも注目が集まる
G20大阪サミットは6月末に開催されますが、その前に為替相場を大きく動かすイベントがもう一つ予定されています。
米連邦準備制度理事会(FRB)による連邦公開市場委員会(FOMC)による政策金利発表とその後のパウエルFRB議長の会見です。
日本時間の6月20日(木)午前3:00に政策金利発表、午前3:30にパウエルFRB議長の定例記者会見が行われます。
この米金利の変動が米ドル円だけでなく為替相場全体に大きな影響を与えるのですが、現在までの推移を簡単に確認しましょう。
2014年の0.25%から見ると米経済の好景気に伴って現在まで上がり続けているのが分かります。
2019年5月時点では2.50%まで金利は上昇しています。

アメリカの好景気にも陰りが見え始め、市場においては7月以降に年内で2回の利下げが予想されています。
まだ市場に十分に織り込まれているとは言えず、この金利動向を考えると米ドル円は長期的には下落する可能性が高いと言えます。
6月のFOMCの政策金利発表においては金利の据え置きが予想されているので「変更なし」であれば今回そこまで大きな動きはないはずです。
ただその場合も午前3:30からのパウエルFRB議長の定例記者会見には注意です。
年内2回の利下げ予想を変えてしまうような発言があれば大きく動きます。
そして万が一6月FOMCで政策金利が引き下げられるようことがあれば大きなサプライズとなって米ドル円は急落するでしょう。
6月FOMCの時点ではどうなるか分かりませんが、長期的に考えると米金利低下→米ドル円下落(円高基調)になることが予想されます。
現在は上の米金利の折れ線グラフを見ても分かるように大きな転換期に差し掛かっていると言えます。
長期的なトレンドをつかむためには、アメリカの金利動向に注目する必要があります。

長期足チャートで米ドル円を確認してみよう
それでは最後に長期足チャートで米ドル円を見てみましょう。
下は米ドル円の週足チャートです。
赤丸の期間は2016年11月に米大統領選挙でトランプ氏が当選した後のいわゆる「トランプ相場」です。
この期間は強い上昇トレンドが持続して、101円から118円程度まで一気に上がっていますね。
その後の相場を見ると上下に引いた水平線の間でレンジ相場が動いているのが分かります。
110円を中心として、上が115円程度、下が105円程度になっていて、およそ10円の値幅を行ったり来たりしている状況です。

年初に下方向への仕掛けがありましたが、105円を明確に割らなかったことを考えるとこのラインではかなり買いが入りそうです。
そして万が一この105円のラインを下抜ければ、100円程度まで下落する可能性が高くなります。

もしこの下降トレンドラインを上抜ければ、115円程度までは上昇することも考えられますが、金利動向や経済状況を考えても115円を上抜けてさらに上昇するとは現時点では考えにくいです。
チャートと金利動向を考慮した限りではこの大きなレンジ相場を下方向に抜けていく可能性が高いと言えます。
ただ現在目に見えているリスク、例えば米中貿易戦争の激化くらいではなかなかこの105円から115円のレンジを抜け出すことは難しいです。
つまり顕在化してしていないリスク、例えば米株急落や世界的な経済危機などが発生してはじめてレンジを抜ける動きになるのではないでしょうか。
このサイトの記事でも伝えていますが、相場を予想してどちらか一方に賭けるようなトレードは安定した利益を出すことができなくなります。

今回は相場を予想するような記事になりましたが、あくまで個人の見解ですので、投資については自己責任でお願いします。